リングキー

フルートのキーは、穴の開いてないカバードキーと、穴の開いたリングキーの2種類があります。リングキーは穴をしっかり塞がないと音がでないため、最初はカバードキーの方が良いですが、慣れてきたらリングキーにしようか迷う方もいると思います。ここでは、リングキーの特徴やメリットについて説明します。

音抜けが良い感じがする

リングキーのフルートは、穴の開いたキーが5個あります。穴の開いたキーは、押さえていない時は、空気の抜ける道にもなります。下の図のように、リングキー は、キーの穴からも空気が抜けるため、若干ですが、吹いてる側の感覚として、音抜けが良い(抵抗感が少ない)感じがします。

リングキーの構造

音が明るい感じがする

上記のように、リングキーのフルートはキーの穴からも空気が抜けるため、音孔が少し大きくなったような効果があります。したがって、管の共鳴波長に影響する開口端補正の距離が短くなる効果があります。

開口端補正とは、下の図のように、管が共鳴する定在波の腹が、実際には管の先端や音孔の位置よりも少しだけ遠くにあるため、この補正距離を意味します。

この開口端補正の距離は、管の内径などによって計算されるのですが、音孔が大きくなることで、若干ですが補正距離が小さくなります。

したがって、リングキー の方が若干、開口端補正が小さくなる傾向があり、波長が短くなるため、音程が高くなるのですが、この音程が高くなる分を考慮して、リングキー はトーンホールが、若干ですが歌口から離れた位置に調整されています。

したがって、音程はちゃんとカバードキーと同じ音程になります。ですが、開口端補正が小さいため、吹いた感じですが、若干明るい感じがすると思います。これはアンブシュアで歌口をたくさん塞ぐ場合とあまり塞がない場合のような違いと似ています。

リングキーのフルートを買うと、キーの穴を埋めるシリコンが5個ついてきますが、これは使わないことをお勧めします。リングキー用に調整されたトーンホールの位置で穴をシリコンで塞いでしまうと、カバードキーに比べて音程が若干低くなってしまいます。ですので、使うとしても最初だけとか、薬指だけとか、にとどめておくことをお勧めします。

指使いが矯正できる

カバードキーしか吹いたことの無い方がリングキーを吹くと、最初は音が出ないという方が多いようです。カバードキーの場合、キーの端っこを押さえていてもちゃんと音がでるため、そのままの指使いで吹こうとすると空気が漏れて音が出ないです。

ですが、リングキーで吹いてみると、自分の指の癖のようなものがわかります。(例えば、左の薬指がキーの真ん中まで届いてないとか、右手の人差し指が真ん中からずれているとか。)

最初は意識する必要がありますが、慣れてくれば、自然と真ん中を押さえられるようになり、普通に演奏できるようになると思います。

穴を塞ぐシリコンは使わないことをおすすめします。使っているといつまで経っても矯正されません。

グリッサンド奏法ができる

リングキーにしかできないことがあります。それは、音孔を少しだけ開けたり閉めたりすることで、音程を微妙に変えられることです。少しずつ開けて上の音に連続的に上がっていくグリッサンド奏法も可能です。

ただ、どの音でもできるわけではないので、使い所が難しいです。リングキーの穴は5個あるのですが、ミ、ファ、ソ、ラあたりがやりやすいです。ファ#など、グリッサンドをするリングキーよりも前に穴の開いている場所があると、あまり変化がないです。

なぜ音程が変わるのかというと、これも上述した開口端補正と関係があります。音孔が小さいと開口端補正が大きくなり、音孔が大きいと開口端補正が小さくなるため、共鳴波長が変わり音程が変わります。

また、指で音の振動を感じられるのもリングキーのメリットです。微妙なニュアンスなどが表現しやすいです。

まとめ

リングキーのメリットを書いてきましたが、音を聞いてる側からすると、リングキー とカバードキーの違いはわからないと思います。ですが、吹いてる感覚としては、明らかな差が感じられて吹きやすいと思います。また、指で音を触っている感覚もあり、自分自身で音をコントロールできる範囲が拡がると思います。

リングキーを買おうか迷ってる方の背中をひと押しできれば光栄です。でも、試奏してから考えることをおすすめします。

最後に、私がリングキーのグリッサンド奏法で、無理やり「君が代」を吹いた動画をご紹介します。